本文へ

指示・限定・否定の代名詞(э́тот・весь・никто́)

2026年9月21日(更新:2026年11月3日)

э́тот・тотは、話し手に近いものと遠いものを指し分ける代名詞です。весь・ка́ждый・самは範囲や強調を表し、никто́・ничего́は「誰も・何もない」ことを表す代名詞です。э́тот・тот・весь・ка́ждый・самは修飾する名詞の性・数・格に合わせて形が変わり、никто́・ничто́は文中の役割に合わせて格変化します(ничего́ は ничто́ の生格です)。никто́・ничего́は、動詞の前の не と一緒に使います。

使う場面

話し手に近いものを指すときはэ́тот、遠いものを指すときはтотを使います。тотは、э́тотで指したものと対にして、もう一方を指すときにも使います。Э́та кни́га моя́, а та — твоя́.(この本は私のもので、あの本はあなたのものです)では、та がэ́таで指した本とは別の本を指しています。весьは「すべての」、ка́ждыйは「それぞれの」、самは「自分自身で」を表し、никто́・ничего́は人や物が誰も・何もないことを表します。

  • Э́то тебе́, а вон то — мне.(これはあなたの分で、あれは私の分です)
  • Никто́ не пришёл.(誰も来ませんでした)

時間では、今を含む期間や今に近い日(в э́ту суббо́ту「今度の土曜日に」)を э́тот、話に出た別の過去や未来の時点を тот で指します。В э́том году́ я учу́ ру́сский язы́к.(今年はロシア語を勉強しています)に対して、В тот год я жил в Москве́.(その年はモスクワに住んでいました)のように使います。

作り方

まずэ́тотとтотの格変化を確認します。

作り方(元の形・格・日本語)
元の形格日本語
э́тот(この・男性)主格 э́тотこの〜は
э́тот(この・男性)生格 э́тогоこの〜の
э́тот(この・男性)与格 э́томуこの〜に
э́тот(この・男性)対格 э́тот/э́тогоこの〜を
э́тот(この・男性)造格 э́тимこの〜で
э́тот(この・男性)前置格 э́томこの〜について
作り方(元の形・格・日本語)(2)
元の形格日本語
э́тот(この・女性)主格 э́таこの〜は
э́тот(この・女性)生格 э́тойこの〜の
э́тот(この・女性)与格 э́тойこの〜に
э́тот(この・女性)対格 э́туこの〜を
э́тот(この・女性)造格 э́тойこの〜で
э́тот(この・女性)前置格 э́тойこの〜について
作り方(元の形・格・日本語)(3)
元の形格日本語
э́тот(この・中性)主格 э́тоこの〜は
э́тот(この・中性)生格 э́тогоこの〜の
э́тот(この・中性)与格 э́томуこの〜に
э́тот(この・中性)対格 э́тоこの〜を
э́тот(この・中性)造格 э́тимこの〜で
э́тот(この・中性)前置格 э́томこの〜について
作り方(元の形・格・日本語)(4)
元の形格日本語
э́тот(この・複数)主格 э́тиこの〜は
э́тот(この・複数)生格 э́тихこの〜の
э́тот(この・複数)与格 э́тимこの〜に
э́тот(この・複数)対格 э́ти/э́тихこの〜を
э́тот(この・複数)造格 э́тимиこの〜で
э́тот(この・複数)前置格 э́тихこの〜について
作り方(元の形・格・日本語)(5)
元の形格日本語
тот(あの・男性)主格 тотあの〜は
тот(あの・男性)生格 того́あの〜の
тот(あの・男性)与格 тому́あの〜に
тот(あの・男性)対格 тот/того́あの〜を
тот(あの・男性)造格 темあの〜で
тот(あの・男性)前置格 томあの〜について
作り方(元の形・格・日本語)(6)
元の形格日本語
тот(あの・女性)主格 таあの〜は
тот(あの・女性)生格 тойあの〜の
тот(あの・女性)与格 тойあの〜に
тот(あの・女性)対格 туあの〜を
тот(あの・女性)造格 тойあの〜で
тот(あの・女性)前置格 тойあの〜について
作り方(元の形・格・日本語)(7)
元の形格日本語
тот(あの・中性)主格 тоあの〜は
тот(あの・中性)生格 того́あの〜の
тот(あの・中性)与格 тому́あの〜に
тот(あの・中性)対格 тоあの〜を
тот(あの・中性)造格 темあの〜で
тот(あの・中性)前置格 томあの〜について
作り方(元の形・格・日本語)(8)
元の形格日本語
тот(あの・複数)主格 теあの〜は
тот(あの・複数)生格 техあの〜の
тот(あの・複数)与格 темあの〜に
тот(あの・複数)対格 те/техあの〜を
тот(あの・複数)造格 те́миあの〜で
тот(あの・複数)前置格 техあの〜について

次にвесь(すべての)とсам(自分自身で)を確認します。

作り方(元の形・格・日本語)(9)
元の形格日本語
весь(すべての・男性)主格 весьすべての〜は
весь(すべての・男性)生格 всего́すべての〜の
весь(すべての・男性)与格 всему́すべての〜に
весь(すべての・男性)対格 весь/всего́すべての〜を
весь(すべての・男性)造格 всемすべての〜で
весь(すべての・男性)前置格 всёмすべての〜について
作り方(元の形・格・日本語)(10)
元の形格日本語
весь(すべての・女性)主格 всяすべての〜は
весь(すべての・女性)生格 всейすべての〜の
весь(すべての・女性)与格 всейすべての〜に
весь(すべての・女性)対格 всюすべての〜を
весь(すべての・女性)造格 всейすべての〜で
весь(すべての・女性)前置格 всейすべての〜について
作り方(元の形・格・日本語)(11)
元の形格日本語
весь(すべての・中性)主格 всёすべての〜は
весь(すべての・中性)生格 всего́すべての〜の
весь(すべての・中性)与格 всему́すべての〜に
весь(すべての・中性)対格 всёすべての〜を
весь(すべての・中性)造格 всемすべての〜で
весь(すべての・中性)前置格 всёмすべての〜について
作り方(元の形・格・日本語)(12)
元の形格日本語
весь(すべての・複数)主格 всеすべての〜は
весь(すべての・複数)生格 всехすべての〜の
весь(すべての・複数)与格 всемすべての〜に
весь(すべての・複数)対格 все/всехすべての〜を
весь(すべての・複数)造格 все́миすべての〜で
весь(すべての・複数)前置格 всехすべての〜について
作り方(元の形・格・日本語)(13)
元の形格日本語
сам(自分自身で・男性)主格 сам彼自身は
сам(自分自身で・男性)生格 самого́彼自身の
сам(自分自身で・男性)与格 самому́彼自身に
сам(自分自身で・男性)対格 сам/самого́彼自身を
сам(自分自身で・男性)造格 сами́м彼自身と
сам(自分自身で・男性)前置格 само́м彼自身について
作り方(元の形・格・日本語)(14)
元の形格日本語
сам(自分自身で・女性)主格 сама́彼女自身は
сам(自分自身で・女性)生格 само́й彼女自身の
сам(自分自身で・女性)与格 само́й彼女自身に
сам(自分自身で・女性)対格 саму́彼女自身を
сам(自分自身で・女性)造格 само́й彼女自身と
сам(自分自身で・女性)前置格 само́й彼女自身について
作り方(元の形・格・日本語)(15)
元の形格日本語
сам(自分自身で・中性)主格 само́それ自身は
сам(自分自身で・中性)生格 самого́それ自身の
сам(自分自身で・中性)与格 самому́それ自身に
сам(自分自身で・中性)対格 само́それ自身を
сам(自分自身で・中性)造格 сами́мそれ自身と
сам(自分自身で・中性)前置格 само́мそれ自身について
作り方(元の形・格・日本語)(16)
元の形格日本語
сам(自分自身で・複数)主格 са́ми彼ら自身は
сам(自分自身で・複数)生格 сами́х彼ら自身の
сам(自分自身で・複数)与格 сами́м彼ら自身に
сам(自分自身で・複数)対格 са́ми/сами́х彼ら自身を
сам(自分自身で・複数)造格 сами́ми彼ら自身と
сам(自分自身で・複数)前置格 сами́х彼ら自身について

最後に否定代名詞никто́(誰も)とничто́(何も)を確認します。

作り方(元の形・格・日本語)(17)
元の形格日本語
никто́(誰も)主格 никто́誰も
никто́(誰も)生格 никого́誰も(〜ない)
никто́(誰も)与格 никому́誰に〜も
никто́(誰も)対格 никого́誰を〜も
никто́(誰も)造格 нике́м誰と〜も
никто́(誰も)前置格 ни о ком誰について〜も
作り方(元の形・格・日本語)(18)
元の形格日本語
ничто́(何も)主格 (ничто́)何も
ничто́(何も)生格 ничего́何も(〜ない)
ничто́(何も)与格 ничему́何に〜も
ничто́(何も)対格 ничто́何を〜も
ничто́(何も)造格 ниче́м何と〜も
ничто́(何も)前置格 ни о чём何について〜も

э́тотは常に語幹にアクセントがあり、生格・与格・造格・前置格でэ́того・э́тому・э́тим・э́томになります。тот・весь・самは、単音節の形(тем、том、всем、всём、сам)と、語尾にアクセントが移る形(того́、тому́、всего́、всему́、самого́、самому́、сами́мなど)が混ざっているので、単語ごとに覚える必要があります。ка́ждый(それぞれの)は、形容詞の格変化のно́выйと同じ語尾で格変化します(ка́ждого、ка́ждому、ка́ждымなど)。

никто́・ничего́ を使う文では、時制に関係なく動詞の前に не を置きます(Он никого́ не по́мнит.「彼は誰も覚えていません」)。否定文の目的語には、対格 ничто́ の代わりに生格 ничего́ を使います。前置詞を付けるときは、ни と代名詞の間に前置詞を挟みます(誤った形⁠у никого́ ではなく ни у кого́、誤った形⁠о нико́м ではなく ни о ком)。

весьは、期間の長さを表す対格とも一緒に使います。весь день(一日中)のвесьは男性の対格で、主格と同じ形です。всю неде́лю(1週間ずっと)のвсюは女性の対格です。対格の記事で見た「期間を表す対格」(Я живу́ здесь ме́сяц.のような言い方)と同じ考え方で、весьを付けて範囲をはっきりさせています。ка́ждый день(毎日)は繰り返しを、весь день(一日中)は1日全体を表します。

日本語との違い

日本語は「この・その・あの」の3つで指し分けますが、ロシア語は э́тот と тот の2つです。тот は文脈によって「その」にも「あの」にも当たります。また、日本語の「この」「あの」は形が変わりませんが、э́тот・тот は修飾する名詞の性・数・格に合わせて語尾を変えます。

例文

  1. Я не зна́ю э́того челове́ка.(私はこの人を知りません)
  2. э́того → 対格・男性。челове́к が活動体なので、対格は生格と同じ形になる。
  3. Он говори́л со все́ми студе́нтами.(彼はすべての学生と話しました)
  4. все́ми → 造格・複数。весь の複数造格。
  5. Я сам э́то сде́лал.(私は自分でこれをやりました)
  6. сам → 主格・男性。自分自身であることを強調する。
  7. Никто́ не пришёл на уро́к.(誰も授業に来ませんでした)
  8. никто́ → 主格。никто́ を使う文では、動詞の前にも не を置く(否定を重ねても肯定にはならない)。
  9. Она́ ничего́ не сказа́ла.(彼女は何も言いませんでした)
  10. ничего́ → 生格。否定文の直接目的語なので生格の形を使う。「何も〜ない」も動詞の前に не が必要。
  11. Мы говори́ли о том студе́нте.(私たちはあの学生について話しました)
  12. том → 前置格・男性。тот の前置格(単音節なのでアクセント記号は付かない)。

練習問題

正しいものを選んでください。

  1. Я не зна́ю( э́тот / э́того / э́тому )челове́ка.
  2. Он говори́л со( весь / все́ми / всех )студе́нтами.
  3. ( Никто́ / Никого́ / Никому́ )не пришёл на уро́к.
答え
  1. э́того(челове́кは活動体の男性名詞なので対格は生格と同じ)
  2. все́ми(造格・複数)
  3. Никто́(文の主語になる主格)

練習問題(例文の穴埋め2問)

参考にした資料

  1. 代名詞の格変化(склоне́ние местоиме́ний)人称代名詞と所有代名詞の主格以外の形と、前置詞のあとで変わる形が分かります。
  2. 形容詞の短語尾(кра́ткие прилага́тельные)рад・гото́в・до́лженなど述語専用の短語尾の作り方と、使える位置が分かります。
  3. 形容詞の格変化(склоне́ние прилага́тельных)主格以外の格でも、形容詞の語尾を名詞に合わせられるようになります。
  4. 最上級(превосхо́дная сте́пень)са́мыйを使う最上級と、比較級にвсехやвсего́を付けた「誰よりも」「何よりも」の言い方が分かります。